最近は学生時代によく読んだ分析心理学(ユング心理学)の本を読み直すことが多いです。
できるだけ平明に書いてみようと思ったのですがテーマがテーマだけに難しいですね。 興味がない人は読まないことをお勧めします。 ということで分析心理学のことを書く前に誤解がないよう心理学というものについて少々説明してみます。 心理学という学問はまるで読心術のように誤解されることが多いのですが決してそんなものではありません。テレビや雑誌などで、よく簡単な質問からその人の性格を分類するものが多いことからそういう誤解が生じたのだろうと思います。しかし、心理学を基礎的にでも学んだことがある人ならわかると思うのですが、人の心なんてそう簡単にはわからないということで、方法論においてもすごく簡単な当たり前のことを統計的実験的な方法において再現しているつまらないものが多いのも事実です。 心理学という分野は研究者の数だけ方法論があり他の自然科学や社会科学にくらべてパラダイムが確立されていません。というか確立できないものを対象にしているからなのでしょう。というのも「こころとは何か」という定義自体が難しいからなのですね。最近では心理学の分析方法を批判した本が出版されています。僕も本屋で一読したのですが精神分析でよくもちいられるロールシャッハテストなどを無意味のように書いていたのですね。心理学の分析方法を自然科学的な観点から批判するのは簡単なのですが、大切なのは心理学というのが現代の科学の分類である人文科学、社会科学、自然科学の全ての範疇で存在しているということです。なので一概に心理学の分析方法を批判することは心理学全体の誤解を招くもので好ましいものではないと思いました。 例えば実験心理学などのように再現性を求められるものは確かに自然科学の範疇だし、質問紙法や統計データから社会病理の傾向や集団心理を解こうとする社会心理学はおおむね社会科学の範疇です。そして臨床心理学なのですが、これはこの範疇を越えてあらゆる分野の方法を用いて心理療法に組み込んでいくもので、なかなかその分類は難しいのです。 僕が学生時代に専攻していたのは社会心理学というもので、これまた研究対象の広い分野でした。もともと社会心理学の発祥というのが比較的新しく20世紀の戦争などにおける民族対立などに焦点をあてた民族心理学が原点でした。それが研究範囲を広げ集団的行動傾向などの行動予測にまで及び、現在ではストーカーなどの社会病理などなんでも対象にするというようになっています。 僕が専攻していた当時の社会心理学の研究テーマはその方法論は別にして非常に魅力的でした。それは社会的態度という概念(平たく言えば社会的事象に対する意識意見)というものを軸にして対人魅力、対人認知、行動予測、リーダーシップ、集団力学、大衆心理という広範なものを扱う分野だったからです。 その中で僕が一番興味を持ったのは行動予測という言葉でした。(実際、コラム・エッセイに掲載した卒業論文の軸になっているのもこの概念を応用したものだったのですね。) 当時アメリカのフィッシュバインという学者が行動予測式というものを定義し、その方法として質問紙法などによる統計解析に適用できたことから社会心理学の中心的方法になっていきました。 フィッシュバインの行動予測式 B~I=(AB)W1+(SN)w2 行動~行動意図=(行動の結果に対する態度)重み+(社会的規範)重み 日本語で書くとますますわかりにくいのですが、ここで行動の結果に対する態度(Attitude toward Behavior)とは、ある対象にたいして「良い」とか「悪い」とかの認識ではなく、ある対象に対して行動を行った場合どういう結果になると思うかという認識を指します。 社会的規範(Subjective Norm)とは一番わかりやすいところで個人にとって重要な他者の意見というもので、例えば「あなたがタバコを吸うことに対してご両親は好意的ですか?」などのような質問に当てはまります。 人間はこの2つの要因によって「こうしてみよう」といった行動意図(Intention)を持ち、それが実際の行動(Behavior)へとつながっていくというものでした。 ここで重要だったのが人間が社会的動物である以上自分の見解や認識だけで行動を起こすのではなく社会的規範との照らし合わせで行動が決まるということでした。 この式というか概念は当時画期的で、統計的な世論調査として例えば選挙行動などの的中率がいっぺんに改善されたそうです。 あらら、社会心理学のことについて書き出したらきりがないのでまたの機会にコラムの方で書いてみます。 要するに僕が心理学に傾注したのは、自分の人格形成に役立つものとして社会心理学を選んだからですが、その結果は無残なものでした。それは社会心理学が悪いのではなく時代背景や自分自身の責任なのですがそれはまたの機会にでも書きます。 僕は社会心理学を専攻する傍ら、独学で臨床心理学やカウンセリング関連の本を読んでいて、どんどんそちらのほうに興味がいったのです。もともと最初に僕が心理学に興味をもったきっかけは自己愛人間という精神分析学の本からだったのですね。精神分析学というのは心理学というよりはむしろ精神医学の範疇で医学に属します。もともとこの学派を開いたフロイトが精神分析学を医学の範囲に限ったのです。無意識という概念を最初に広めたのもフロイトなのですが...。 あらら、精神分析学を含む臨床心理学のことについて書き出したらきりがないのでまたの機会にコラムの方で書いてみます。 とどのつまり僕がたどり着いたところは「こころ」の定義について一番納得がいったのが分析心理学だったのです。この学派のこころについての定義はユング心理学入門を読んでいただければわかるのですが、大変深遠なものなので知識的に理解するのとは違いある意味体験的に理解する事が大切なのです。 分析心理学の臨床心理士になるためには、心理士自体がカウンセリングを受けて自らのこころの深いところを経験し認知していくといったことを必須としており、このことを教育分析と呼んでいます。 ということで僕が最終的に学びたいと思っている分析心理学というものは、ある学校で単位を修得すればいいといったものではなく、ある種修行(禅宗で言う悟りを啓くことに近いもの)のようなものを体験し人格の向上をするということを含んでいるのですね。しかし、これを何時したいのかという事については今すぐということではなく自分の人生の総括をする頃(例えば65歳あたりでしょうか)だと思っています。 それまでは自分自身を市井の中に置いて社会にもまれることがその準備だとも思っています。
by jun_hara
| 2005-10-01 01:55
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