人気ブログランキング | 話題のタグを見る

レコーディングで一番難しいもの



今回の埋め込み動画は、かつて1985年にNHK教育テレビで放送された一部だけど、
人間の声ほど収録が難しいのもはないことが直観的にわかるだろう。
特にコーラスの収録はレコーディング時点で
基礎工事(ボーカルが即収録できる状態になっていること)が終わっていなければ、
試行錯誤以前の問題であることが一目瞭然である。

今ではDAWソフトの発達でピッチ(音程)の波形補正が一昔前より簡単にできるようになったが、
それでもその作業はレコーディングエンジニアの力量次第でまちまちである。
また、アーティストもレコーディングエンジニアもパンチイン・パンチアウトは兎も角、波形補正なんて望んでいない。
波形補正は生音収録の敗北を受け入れることになるから、
技術的と言うより心理的に容易ではない。

今回はコーラスを例にとったが、他の楽器収録も同じで、
本来なら生楽器の収録が一番理想なのは誰でもわかるだろう。
しかし実際それにかかる予算を捻出してできるのは、
ほんの一握りのアーティストのレコーディングだけである。
初音ミクと同じでいいや」と思うレコーディングは別として。

MIDIを用いて編曲ができるようになったのは今から30年以上前からだけど
この方法さえも生音を完全コピーできる手段の代替えとしては不充分に違いない。

ピアノなどの12音階以外の表現ができない楽器は兎も角
所謂オーケストラのそれぞれの楽器(特に弦楽器)は100%の実現など不可能である。
詳しくは書かないが、弦楽(ストリングス)、ブラス、コーラスの編曲には厳然たるルールがある。
※知る気がある人はプロの音楽理論セミナーでも参加してみればわかります。

例えば弦楽の場合、1st.バイオリン・2nd.バイオリン・ビオラ・チェロなど、
コントラバスを除いた4重奏を用いることが多い。
これらのプリプロ音源を1つのトラックにするのと4つのトラックに分割するのとでは
かかる時間は物理的でも最低4倍必要になる。
特にベロシティなどのバランスを考慮しなければならないから、それ以上の技術力と作業量との闘いになる。

※MIDIの通信プロトコルでは、転送速度にレイテンシー(遅延)が生ずるし、12音階以外の表現はできない。

だからと言って、諦めるのは早すぎる。
生音をサンプリングした音源ソフトはどんどん出てきている。
それを使いこなせるかは別として、
時間との闘いになるが、
「今よりもっとこんなサウンドにしたい。」という気概があれば
プロのメジャーレベルによる収録ではなくても
60点以上は目指すことができる時代なのだ。
100点満点はないとして。

兎に角レコーディングの過程には多種多様な選択肢があって
昔と変わらず、
関わる人間が増えるほど、それをまとめていくのが難しい作業であるのは確かで
「なんでこんな奴らのご機嫌まで把握しないといけないんだ?」と言う過程があって成立する事がある。
特に厄介なのは、理屈だけで経験の裏打ちもない外野の意見であることが多い。

しかし、裏を返せば
これらを超えてメインアーティストを含むレコーディングに関わった人達が
その時点で納得ができるところへ持っていけたら
プロデュースもその時点で合格点になるのだろう。
そこでやっと責任者の孤独が報われ、「諦めないでよかった」という充実感につながる。

要するにレコーディングとは
技術を前提にした禅の修行に近い領域なのだ。
何事もTry & Errorを繰り返して、今よりも、もっと高みを目指すことができるのだろう。

この文章を書いていて、僕らのようなシステム開発のプロジェクトによるチーム作業には
おおよそ当てはまる気がした。
by jun_hara | 2014-03-29 22:22 | music | Comments(0)


<< Honesty すぐそこ >>