河合隼雄先生の心理学



僕の敬愛する故・河合隼雄先生(京都大学教授)の講演録です。
母が現役の幼稚園園長だった頃、兵庫県の教育界に多大な力があったので、
僕の恩師・田中國夫(関西学院大学教授)を講師に招いたこともあったのですが
流石に河合隼雄先生を招いたことはありませんでした。
しかし、関西での話ですから母は何度も河合隼雄先生の講演は聴いています。

わが母の恩師の評価は酷評だったので詳しくは書きませんが
河合隼雄先生の話は
「聴いている時には、なるほどと思うけど、
思い返すと、訳がわからへんようになる」と言っていました。
そりゃそうです。
分析心理学(ユング心理学)は、物語るもの(事例研究)であって、
方法論が精神分析学(フロイト心理学)のように自然科学が土台にした因果律を軸としていませんから。

この難解さについて分析心理学は長きにわたり実証主義の科学ではないとして批判されてきたのですが
そもそも「心」を自然科学として定義するのには無理があるのです。
僕が専攻した社会心理学においては「態度」と言う概念に限定して
社会科学的に研究されたものでした。
要するに、「深層心理」には触れず、
統計学などを用いた「意識(または意見)分析」の域を出なかったのです。
正確には行動科学と言われるアメリカの心理学です。

僕はゼミを専攻する前の半年間、素人ながらも不登校児の家庭教師をしていたのですが
それまで独学していた精神分析学では子供の心を理解できませんでした。

この答えを導いたのは河合隼雄・著コンプレックスでした。
兎に角、難読書でもあり、自覚反省を伴うものでしたから、受け入れるのには時間がかかりました。
これも何の因縁か、恩師のゼミに入る1か月前、プレゼミということで読まされ、発表を行う課題だったのです。
つまり、恩師のゼミに入らなかったら、河合隼雄先生のことも知らなかったのです。

実は僕もK.G.ユングのことは詳しく知りません。
僕が興味を持ったのは河合隼雄の心理学でしたから。

僕は学生時代、京都まで同じゼミの女の子と河合隼雄先生の講演を聴きにいったことがありました。
その時に印象的だったのは、質疑応答で河合隼雄先生自身の事を聴いた聴衆に対する答えでした。
それは憤慨したような様子で「私は私のことを語るのが嫌いです」と言った内容だったのですが
先日読み終えたこころの最終講義には、自身のことが多々書かれていました。
と言うより晩年の講演録ですから、語られていたからです。
あとがきに、息子さんもそれについて「興味深い」と書かれていました。

要するに現役の臨床心理士は、軽々しく自らの経験や主張を語ってはならないと思ったのです。
今読んでいるノンフィクションライター最相葉月・著の新刊本セラピストは河合隼雄先生や臨床心理学の入門としてはお勧めです。
by jun_hara | 2014-04-26 22:35 | 情報


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