早いもので大学院に入学して一年が過ぎる。
4月になれば一年前と同じく、我々が歓迎していただいたことを担当することになった。 今月は、東京から引き揚げてきてからも縁が続いているか、新たに縁があった人たちと毎週のように合っていた。 近況を聴いているだけで、時代の変化の速さか、歳のせいかはともかく、誰もが想定もしていない展開になっているようである。 そんな話を聴いたり、自分の事を振り返ってみると、不思議なもので、「時の力」は個人の意思とは関係ないところでバランスがとれているように思えてくる。 ある意味、七転八倒した結果が振り出しに戻り「下手な考え休むに似たり」で原点に戻ったりする。 これは、「考えるな」ということではなく、「真面目にやっていたことは、なるようになる」という解釈で。 つまり、物理的年齢を考慮すれば、加算法で展開するほうが不自然に思えてきて、そぎ落としていく過程として戻ってきたように思えるのである。 元々は自分でもそう思ったいたはずで、今はニューヨークへ行かれた先生へ送らせて頂いたメールの言葉が以下のようなものだった。 結局、万事休すだと思っていた事も、元々やろうとしていた研究に戻りつつある。 要するに、何を言われても、どんな評価が出ても、「やってやろうじゃないか」と思えてくるのである。 メール件名:「負の力」について 送信日:2016/05/08 (日) 挨拶文省略 ケーパーの言う「Negative capability」は、日本語に訳すと、否定的な事柄に耐えられる能力である。 どのような人にとっても人生や社会は理不尽なものにまみれてるし、決して思い通りになることばかりではない。時には個人の力では何ともしようがないこともたくさん起き、そうした時にでも何とか生きていかねばならないのが人生である。このような受け入れがたい体験についてネガティブな関係を生き抜くことにより人間の底力となっていく。 しかし、この能力は器質的に備わっているものではない。受け入れがたい体験をあるがままに受容するのは、一人では成し難く、ある一定の期間を通じて、その体験にまつわる感情などを追体験(または想起)する必要さえ出てくる。ここでの原体験と追体験の違いは、体験に関わるセラピスト(またはカウンセラー)など、「見捨てない他者」の存在の有無である。しかし、この存在は外科医のような治療をしてくれるわけではない。最後に自分を救うのは自分しかいない事に気づく道程までの他者存在を意味する。 この意味においてセラピストとクライエントがネガティブな関係になっていることを話し合いの土台に乗せ、それがどのような意味を持つのかについて二人で考えていく作業が心理療法的に必要になってくる。この過程を経て、負の追体験がクライエントの行動や思考、生き方の軸となっていき、清濁併せ呑む人生を超えて行ける「Negative capability」として『段階的に』身について行くのである。 よって、セラピストは外科治療的な一朝一夕に解決できるといった態度で関わることは戒めるべきで、山登りに例えれば、ある程度の地図は持っているものの、登るべき道はクライアントが選択し、自らはそれに同行者として、「クライアントが途中で挫折しないためだけの最低限の配慮」を持つといった態度が問われてくる。 引用・参考文献省略
by jun_hara
| 2017-03-18 21:10
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