この秋は
仕事に始まり仕事に終わる でいい。 どんなに遅い帰りになっても帰り道に涼やかな丸の内のビル明りに照らされていると、それだけで「あー今日も一日よくやった。」と素直に感じられるから。帰り道の風景はやっぱり重要なのだ。 夜の東京駅を眺めていると昔の京都駅を思い出す。 今の京都駅は無機質な現代建築に成り下がってはいるけど、僕が学生の頃はどこか野暮ったくもありながら近代建築の煉瓦造りの味があり、これこそ雅のひとつだと思っていた。 雅といえば京都だけで手に入る同名の煙草があった。 味はこれ以上不味いものはないくらいだったけど、パッケージが黒塗りに虹色の文字が書かれた粋な柄だったので、高校の時からこのパッケージの柄が好きで何度も買ってはみた。でも何度味わってもその不味さにはだまし続けられたので流石に今はその味さえも忘れてしまった。 江戸の粋と京の雅 価値観は違うけれどその土壌が表現する美学という点では同じで、そこに住む人はその躾こそが大切なものと信じてきた。 輪違屋糸里の録画を観ながらふとそう思った。 15年ほど前に京都の嵐山に住んで大阪の本町に通勤したことがあった。 大した思い出もないのだけれど、住んでいるアパートから桂川に掛かる渡月橋まで自転車でいける小春日和の休日はほんの少しの幸せがあった。 その頃には学生の時によく通った河原町荒神口のジャズ喫茶シアンクレールも無くなっていて、そのせいもあってか四条河原町界隈へ行くことも少なくなっていった。シアンクレールは二十歳の原点に登場する店で、ビルの2階にある薄暗く狭い隠れ家だった。(1階はガラス張りのクラシック喫茶でこちらもシアンクレールだったが一度も行ったことがない) この本(というか日記)の著者である高野悦子さんが自殺したのは立命館大学の3回生の時。時代は今年大量の定年を迎える団塊の世代が学生だった時期である。この世代はまたの呼び方として全共闘世代とも呼ばれ、1969年に東大安田講堂が陥落する年にあたる。当時、立命館大学は広小路といって荒神口にほど近いところにあったらしいが、僕が大学生の頃には影も形もなく、既に現在の衣笠山へ移転していた。 今でもそうだけど僕はひとりで誰にも邪魔されずに本屋や楽器店、レコード店などを歩いて回るのが好きで、とりわけ京都では街の歴史的情緒と相まって、いたるところに本屋があり、あっという間に時間が過ぎてしまうことが度々だった。 その合間には匿名性を甘受できる休憩場所があって、僕にとって京都ではシアンクレールがそうだったので、閉店を知った時の侘しい気持ちは今でも覚えている。 京都に住んでいた頃、一番はまった音楽はウィンダム・ヒルレーベルの環境音楽だった。 今でこそ就寝する時には空気清浄機の音しか聴こえてこないけれど、20代の頃は子守歌代わりにウィンダム・ヒルのCDを毎晩かけていた。 東男に京女という言葉があるけれど、関西では何度も惚れ込んだ女性や心許せる女友達はいたけれど、そんな縁のある男には出会わなかった。 それとは真逆に東京で暮してから長くなるけど、昔のように惚れ込む女性に未だ出会ったことはないが、腹を割って話せる友人は数人できた。 ふたついいこと さてないもんよ これは今年他界された河合隼雄先生の好きだった魔法の言葉だ。 できることなら18歳に戻って京都大学教育学部(臨床心理学科)を受験していたなら...などと思ったりもする。そうすれば何の迷いもなく今頃は臨床心理士にでもなっていたのではないかとも。 勿論合格するには18歳だと遅すぎるだろうけど。 とりとめもないことを書き続けた。 過去のことを思い出すことが多いのは今が面白くないせいだろうけれど、振り返る過去があるだけまだ救われている。 今回の写真は東京駅地下コンコースに展示されているルノーのF1マシンです。
by jun_hara
| 2007-09-14 23:17
| 独り言
|
Comments(0)
|
検索
メニュー
カテゴリ
以前の記事
2017年 08月 2017年 03月 2016年 12月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 フォロー中のブログ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||